『カーボカウント』という生き方

〜『食』を通しての自己表現を支援する〜

僕は「基礎カーボカウント」の普及活動にここ数年ずっと取り組んで来ました。基礎カーボカウントという方法で伝えたいことはたくさんありますが、その中心は『カーボカウントという生き方』の提案です。基礎カーボカウントを活用した「薬物療法最適化プログラム」や応用カーボカウントを用いた「インスリン療法の支援」といった分野だけでなく、『生き方』としてのカーボカウント指導です。それは、糖尿病をもった人々が、人生の主体者として、「自分らしく食べる」という生き方です。『食』を通しての自己表現を支援することです。ときどき、自分らしい「食」を表現することができないという人に出会います。自分らしい食の表現方法が分からない方が、実はもっとも食事管理支援が難しい人々かも知れません。

「エネルギー制限食」や「糖質制限食」という方法でも自己表現することは可能ですが一般の人々にはかなり難しい。それらの指導法で自分の「自主性」「生き方」が尊重されたと感じることができるのはごく少数の人々だと思います。

「カーボカウント」は、その人がその人らしく生きるための食事支援法です。炭水化物比率 40〜65%の中で、その人らしさを尊重しながら、血糖管理、体重管理、脂質管理、腎機能管理を両立させるための技術的な支援をしていきます。でも、一番大切にしているのは「その人が、その人らしく生きること」。いわば “食を通じてwell beingを高めること” を支援することに他なりません。むろん炭水化物比<40%の食事管理法を望む人がいたら、真剣に全力で向き合って、それがその時点で、その人にとって最善の自己表現方法であり、医学的にも安全を担保できると判断できるのであれば、慎重に全力で支援していきます。

それ故、カーボカウント指導には以下のような資質が求められるのだろうと思います。
・「糖尿病」という病気だけでなく、患者を全人的に理解する能力。
・医療専門職としてのフレイムを患者に押しつけず、患者の生き方を理解・尊重し、患者のフレイムと医学的なフレイムとの両立を図っていくことができる専門的な技術。