日本の糖尿病食事療法をイノベーションする!

数日前、Facebookに投稿した記事なのですが、こちらでも紹介させていただきます。

■なぜ日本の糖尿病食事療法は食品交換表にがんじがらめなのだろうか?

若年2型糖尿病を発症してから、管理栄養士になろうと決心し、現在専門学校に通う青年がいる。栄養士をめざす決心をする前、かれは一時期、糖質制限食に取り組んでいた時期があったが、今は糖尿病患者の模範となるべく、栄養学を学んでいる。

最近、彼と以下のような対話をした。

Pt:今、食品交換表を毎日習っています。

僕:日本のDM食事療法は、食品交換表にがんじがらめだと感じないかい?

Pt:え〜、そうですね。

僕:米国では、科学的な根拠を尊重しながらも、個人の文化や希望、能力などによって、柔軟な指導を展開しているのに、日本は交換表一点張り。それは多分、米国が多民族国家であるからではないかと思う。白人、黒人、ヒスパニック、アジアなど色々だし、経済格差、教育格差も大きい。だから、科学的根拠を縦糸に、文化的な配慮を横糸にして、両者を編み上げているのだと思う。日本は、それぞれの患者の病態に合わせた指導すらできていない。だから、君には基礎カーボカウントをしっかりとマスターしてもらいたいと思っている。

といって、拙著2型糖尿病のためのカーボカウント実践ガイド:食品交換表とカーボカウント』(医薬ジャーナル社)を紹介させていただいた(*^_^*)。

 病態に基づく糖尿病食事指導は以下のようなスライドで紹介している。


基礎カーボカウントを活用した薬物療法最適化プログラム

『2型糖尿病のためのカーボカウント実践ガイド:食品交換表とカーボカウントの連携を推進する』(医薬ジャーナル社)を出版してから、このテーマの講演依頼が増えています。近々予定している講演会で用いる【講演要旨】をご紹介します。

【講演要旨】

近年、糖尿病治療のテーラーメイド化が叫ばれている。徒にA1c値の改善ばかりを追求するのではなく、「低血糖」「食後高血糖」「体重増加」などに配慮し、患者の病態や患者の希望に合わせた薬剤選択(決定共有アプローチ)を行うことの重要性が再認識されている。演者は基礎カーボカウントを活用した薬剤最適化プログラムを提案している。7ポイント3日間の血糖応答から「血糖のパターン」を評価し、低血糖の有無、空腹時(食前)高血糖の有無、食後高血糖の有無を評価し、それらの血糖値異常がなぜ生じているのかを、「食事記録」「運動記録」から解析し、「血糖パターン異常」に合わせて、適切な処方変更を行い、その都度「血糖パターン分析」を繰り返すことで、血糖変動の少ない、体重増加の生じにくい最適な薬剤を選択していくためのプログラムである。食事中の糖質に着目すること(基礎カーボカウント)で、「処方と患者のマッチング(処方に由来する問題)」と「食事の影響(患者の自己管理に由来する問題)」を分離することが可能となり、その結果、薬剤の最適化と食事指導を同時に進めていくことができる点が、他のアプローチにはない本プログラムの特徴といえる。血糖パターン分析を行う際には、血糖値異常の背景にある【病態】(インスリン分泌低下、インスリン抵抗性)に配慮しながら、薬剤の選択を行うことが重要である。当日は血糖パターン分析による薬剤最適化の実際を、症例を提示しながら解説する予定である。

 

「Accu-Chek Connect セミナー in 水戸」のプログラムのお知らせ

日時:2014年4月12日(土)、14:00〜17:30(13:30受付開始)
会場:茨城県立県民文化センター

第1部:2型糖尿病における『基礎カーボカウント』の意義 14:10〜15:40
1)イントロダクション(10分間)
・糖尿病療養指導におけるナラティヴ
・食事と血糖応答と薬を統合することで実現するテーラーメイド治療
2)基礎カーボカウント(40分間)
3)SMBGをめぐる諸問題(40分間)
4つのテーマについて、グループワークを行います。

coffee break:15:40〜15:50

第2部:カーボカウント指導にSMBGを活用する:15:50〜16:15
1)SMBGを最適化する(5分間)
2)「基礎カーボカウントが適した患者」と「バランス食が適した患者」(10分間)
3)血糖パターンに基づいて薬剤最適化を行うための基本的な考え方(10分間)

第3部:Structured SMBG(体系的なSMBG)の実践:16:15〜17:30
1)体系的なSMBGの進め方の手順(15分間)
2)症例検討
症例A:薬に頼りたくない頑固な60代男性(20分間)
症例B:食事管理が苦手な高度肥満女性 (20分間)
症例C:罹病期間の長い、真面目な痩せ型男性(20分間)

今回、『基礎カーボカウント』のレクチャー終了時に、以下のようなスライドを提示して、参加者の質問にお答えして、ある程度ご理解いただいた上で、第2部、第3部へ進んでいこうと思っています。正直、1つの症例検討に20分ずつしかかけられないことは甚だ残念ですが、今回はそれぞれ異なった3つの病態、異なった患者信念や動機づけレベルを考慮した「薬剤最適化」を味わっていただくため、敢えて3症例にチャレンジしようと思っています。